三千円でごめんなさい/doon
 

 少しだけ纏わりつくような線香の匂いの中
 自分の部屋へ返ってきた


 それから

 三年
 ふとあの時の三千円の事を思い出し
 死んだ人の名前を思い出そうとしたが
 やっぱり私は知らなかった

 自分の死というものをよく見つめていた私にとって
 対岸の火は やっぱり対岸なのだろう
 人はそんなものなのかもしれない
 三千円分
 知らない死んだ人への贈り物
 特別でない死など
 私たちにとってそれ位なのかも知れない
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