三千円でごめんなさい/doon
死んだんだってさ
この辺りで一人の年寄りが死んだらしい
それまで興味など無かった筈が
急にその人の家の前を通るたびに
死んだんだってさ
という 主婦達の声を思い出す
垣根の向こうには変わりない一戸建て
当たり前なのだが
当たり前なのだ
やがて私は、わずかな貯金からひねり出した三千円を
ピン札だったか
皺くちゃだったか
もうどっちでもいいのだが
封に入れて焼香をしに行った
死んだんだってさ
誰もその言葉を、その場で言わない
夜の突き当たり
雪洞が明るかった
帰り際には 名前も知らない年寄りへの焼香が終わり
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