高校にて/円谷一
 
 高校入学前の4月
 一足先に入学する高校に見学に来た
 まだ雪が残っている
 桜はまだ咲いていない
 グラウンドの横を通るサイクリングロードを
 蕾を付けた桜の木々が覆い被さっている
 敷地内には車は一台も止まっていなく
 人一人としていない
 静寂が駐車場に音の無いバウンドをしているようだ
 アスファルトは渇いている
 それは久し振りのことだ
 初めて見る校舎は大人の匂いと
 威圧的な存在感を放っていた
 空が曇っていたのが更にそう思わせたのかもしれない
 ここでは時間が並々と流れるような気がした
 これから過ごす高校生活を
 何の不安もなく想像していた
 嫌
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