自我像/円谷一
 
も嬉しいことなのである その絵が──絵という表現をもう超えているのかもしれないが──どう評価 どういう結果を招いてしまっても 構わない 先程述べたように大抵の人が自分の本当の姿を見て激怒して悲しんで 絶望しても決して偽りを描きたくはないのだ それが信念である
 夕暮れになって太陽に想いを馳せる時 必ず ゴッホとは対照的な絵を描く それは太陽の自我像でもあるのだ 紅く 情熱的で 母性的である 絵は詩と似ているとある詩人が言っていたが 本当にその通りで 叙情的な気分になって心の中で即興の詩を流すのだ やがてズンデルトは暗闇に包まれて家へ帰る そして蝋燭一本だけを灯してゴッホの自我像を想像して描きながら彼のことを誰よりも深く想うのだ
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