今も遠くの風が吹いている/霜天
 
白鷺の羽音の通り過ぎるその、揺らぎ
一面の青葉、その遠くで駆ける声、という声
ここにきて姉は心から、静かに千切れてしまった
さあ行こう、にも飛ぶための脚は足りず
退こうにも継ぎ足す、言葉も無く

一面の青葉
それは隠された場所の
今も遠くも同じ風の吹いている一面の、揺らぎの
震えるように並んだ蒲公英の黄色い
踏み込めない弱さ、のような


あなたの首筋に触れる言葉を、吐く
私も足元から、緩やかに千切れていくので
千の夜を指折る前には、帰ってしまうでしょうから
渡る
一面の青葉
白鷺の羽音は通り過ぎて、渡る
それを見逃さないように
それを真似てしまえるように


一面の青葉
それは隠された場所の
今も遠くも同じ風の吹いている一面の、揺らぎの
遠く遠く馴染んでしまえば変わることも無い一枚の景色の
その窓辺に配置される私とあなたと
千切れてしまった姉を包んで
その足取りも遠くなるように

駆け抜ける風音は遠く、今も
上に下に繰り返す、丘の
さあ行こう、にも飛ぶための脚は足りず
支える手は、常に、今も
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