午後の手/木立 悟
 

高みへ 高みへ
翼をひろげる鳥の群れに
空はふちどられたままでいる



音が音をひそめながら
緑に曇る午後を見ている
離れているのに離れずに
ともに震えを待つ姿
見えないものを待つ姿



鳥のかたちをふちどる銀から
鳥のかたちの雨が降る
音を描く手は雨につながり
雨につながり
ひらいてゆく



音は緑に 手は銀に
銀は緑に 音は手に
うつり変わる光を重ね
午後は空を描いてゆく
午後は鳥を描いてゆく





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