七里ヶ浜にて/銀猫
低く垂れ込めた
嵐の雲のなかへ
灰緑色の階段が続き
海は大きなちからに
踏みしめられるように
しろく崩れながら
膨らんでは混じり合い海岸線を削ってゆく
風はいっそう強くなり
雨と潮は無造作に
からだを刺す
乱暴な空模様に
七里ヶ浜は哭き
砂で作られたくろい腕も
泡と変わり
女の髪のように
頼りなく波に揉まれて沈んでゆく
(なぜ、)
その問いは
強い風にちぎれて
ことばを拾おうとしたわたしの指を切り
呼吸はどこか
うすく血の味がした
なぜ海が見たいのだろう
夏を待てずに
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