青い旋律/桜井小春
汗がそうであるように
涙がそうであるように
この胸の中には海がある。
私は一頭のザトウクジラに恋をした。
優雅に泳ぐ様が
アルペジオによく似ている。
勢いよく潮を噴き上げる様が
フォルテッシモを思わせる。
久しぶりにピアノを弾いてみようか。
ペダルを踏んで
和音を奏でてみようか。
彼に届けばいいと思う。
彼の耳に心地良いのは
もう1オクターブ上だろうか。
私の音楽など
海から聴こえる唄に比べれば
ただの音にしかすぎない。
私が眠りにつく頃
彼は海の最果てへとた
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