寂しい午後/円谷一
喧騒で溢れかえっていると思った午後は静寂で満ちている
陽の光だけが強くて寂しい午後だ
布団にくるまりじっと耳を暗闇の中にそば立てている
もうすぐ眠りに就く頃だ
でも何かが眠りを妨げているようで 何かは体の中で風船のように膨らんでいく
部屋の中は暑い
ふと「魔女の宅急便」が見たくなった 永遠の夢物語だ
回想する キキが少年の自転車に乗って飛行船を見に行くシーン
時間も時空も超えて その世界に浸っているような気持ちになる
寂しい午後が真下に見えるようだ
飛行船になったような気分だ 山々を街を見下ろす
何処までも何処までも進んでいく
しかし突然火が付いて
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