手つなぎ鬼の足音/ねろ
手つなぎ鬼がぐるぐるまわってこっち見て笑う
鬼はどちらかなんて分からないと答えると
かけた歯を見せてうれしそうに笑う
ぼくにはそれがとても無邪気に思えた
鬼さんこちら手の鳴る方へ
小さな手が何本も束になって
始まりに向かって伸びていく
いっしょにあそぼうよ、あそぼうよ、
ちいさなゆうれいが廻りまわって
僕のところで終わる
鬼さんこちら手の鳴る方へ
そういうものが僕には祈り、に見える
小さくいながらに明日が続くことを
続かないかもしれないことを知っているようだった
僕は這い回るいくつもの明日の可能性を探しながら
夕べをとじこめた冬のグラスを洗って
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