夜を泳ぐ/朽木 裕
飛び込めないのは25メートル先の地上
あたし 空なら飛べるわ
耳鳴りがやまない
自分が嫌で吐き気のする夜
夜の闇に溶けたら君のもとまで行けますか?
鉄柵のうえで足を投げ出して
見えもしない星を見上げて、祈る
あたし あのひとが すき
茫漠と夜が滲んで闇の一部に成れた気がした
月は冷たく夜を引っ掻いて
風はびゅうびゅう吹きすさぶ
足はぶらぶら宙を舞う
位置について、飛び込み、用意…なんてね
夜が真っ黒い水をたたえて
静かに静かに波紋をつくる
きぃん
凍えるような神経の音
セーラー服ひるがえる
手を伸ばせば届きそうなソラへ
飛び込めないのは25メートル先の地上
あたし 空なら飛べるわ
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