檻の女神/悠詩
 
心の傷を刻んだ日記を
銀の檻に閉じ込めた
底の見えない泉に沈めて
冷たい鍵を握りつぶした

もう二度と振り返りたくない
この手で穢した自分
別れの言葉も告げずに目を閉じ
背中を向けて歩き出した

暗き森から囁きが聞こえる
「わたしは檻の女神」
零した涙はあなただけのものではない
雫を虹に変えて進みなさい

たった一つの光に差し伸べられた
幾つもの掌があった
あなたさえ振り返る勇気を持てば
囚われの女神も振り向くから
一度自らが手放した輝きは
遠く深く眠りにつくの
だからどうかあなたも忘れないで
檻の女神が微笑むのは ただ一度だけ


空回りする螺子
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