ひきつづき/たもつ
 
 
バスに乗る
名前だけが剥がれていく
何かの間違い、というより
むしろ略式でも正しいことであるかのように
良かった、わたしたちは
バスに乗られることがなくて

席に座り
バスの一番柔らかいところを
かじるわたしたちは
軽くなった分、どこか許された気がするけれど
内緒の話をしている時みたいに
口に広がる幸せは
いつも恥ずかしい

窓を開ける
景色だけがあり
他には何もないことを
ひきつづき景色と呼んだ
毎朝生まれ変わり
それでもわずか百数十センチの背の高さから
地面に落ちることを恐れなければならない
良かった、わたしたちは
窓に開けられることがなくて

それからともすると
降車ボタンは赤く光り
わたしたちを降りていく人が
少しずついるのだった
 
 
戻る   Point(18)