無感情の花たち/結城 森士
 
だから君は裂けた無花果の散乱した道を
歩いていった

もう少しで笑ってくれるのだろうか
それとも僕に気づかずに去っていくのだろうか
(いつも見ないふりをして)
だから僕は君を見ないふりをして
見ないふりをして

ある日は
綿毛が飛んでいた
ササウチワの白い花の続く道を
君と一緒に歩いていた
神社につくと
君は君ではなくて
狐に変わっていた
もう少しで笑ってくれたのだろうか
それとも僕に気づかないふりをして誤魔化し続けただろうか
だから僕は君を見ないふりをして、
見ないふりをして

去っていった君は
僕達が歩いてきた道のりを
その一本道を
陽炎の様に消して
去っていった(君は)
見ないふりをして

だから僕は無花果の花を潰した
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