電車に乗って田舎へ行こう/円谷一
 
るブリキを主人公にした小説を書こうとしていることを言っていた 君には夢でしか会えない
 夢の崖に魅力を感じながら夢を終えると 目が覚めた 夜が明けていたのだ
 日が出て山の稜線が光っていた 眩しくて元から開けられない目を細めてその様子をじっと見ていると再び家のことが思い出された でもその感情をじっと堪えていた
 空腹は感じなかったが口の中が寂しいと思った 帰る道とは反対側の道をひたすら歩き続けた 水田が眩しく輝いていて 朝の空気はなんとも言えず澄み渡っていた 作物の実る畑も神秘的に映って その影が心に安らぎを与えた
 太陽の照らす方向に歩き続けると駅がぽつんとあった 恐らくローカル線だろう 赤い電車が人々を飲み込んでプシューと音を立てて進んでいった
 ここの電車に乗ればどこかに行けるだろうと思っていた 東京でもここでもない何処かへ 輝く光の世界へ行けるだろうと
 駅にやって来た電車に乗って光の世界へ入っていった 心に電車が通過していった
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