昼下がりが発狂した/カンチェルスキス
広さを言い表せない頭上の空が
歩いてるうちに狭くなる
登場する人物の頭は抜け落ちた
頭で隠していたものは
隠す必要がなかったものだ
電柱のチラシ一戸建ての中古住宅の値段
ショッピングセンターの天井の角に
停止した色のない風船が破裂する
パトカーのサイレンが鳴りやんだ
Uターンの車に軽トラが突っ込んだ
市民グランドは感染した
繁殖した水溜りが
緑のネットの網目に黄身を失った白身のようにからみついた
底の見えないドブ川を埋め尽くす人の頭と頭の隙間に
青白のボラが何匹も詰まった
抜け落ちた頭が
ここに集まっていた
弓なりに曲がった橋の真ん中まできて
昼下がりが発狂した
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