愛していると言ってくれ/佐々宝砂
しりん。
しりいいいいいん。りいいん。いん。
しりん。
水が滴り落ちるこの洞窟で
俺は縮みきったおまえの顔を見ている。
瞳は薄くなった瞼に閉ざされ
口は半ば開いているが
そこから見える舌はまるで木の皮だ。
もう動くまい、
おまえの瞼も、
おまえの舌も、
おまえのなにもかも。
おまえを殺したのは俺だ。
よく覚えていないが
たぶんこの俺だ。
しりん。
しりいいいいいん。りいいん。いん。
しりん。
洞窟に反響する水音。
俺を責めているのだと思う。
そのようにきこえるからには
俺は罪を犯したのだと思う。
誰も助けてくれないのだ
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