五線譜からの囁き/渡 ひろこ
 
五線譜に引っかかっている
音符をひとつ 
つかんで
鍵盤に落としてみた


小さく高く弾んで
涙のしずくに
変わってしまった


やさしく
なにか語ってくれると
思ったのに


もうひとつ落とすと
黒鍵をかすめて
溜め息をついた


もっと聴きたくて
パラパラ落とすと


トリルのようにころがって
ひとりは嫌なの
と囁いた


(わたしも嫌・・・)


淋しくないよと
おもいきり全部
鍵盤に降りそそぐ


いつのまにか
音符が
やわらかな音色に変わった

戻る   Point(14)