明日になれば/恋月 ぴの
 
ちょっと足らないだけだものね
八時二十分を指している
あなたの眉毛の上に
ボールペンかざしてあげる

いざ出かけようとしたら
小糠雨降り出して
傘を差そうかどうしようか
迷うのにも似ているよね

ちょっと足らないだけ

それが問題なんだからと
あなたは不機嫌そうに吐き捨てた

でもね
傘を差さずに歩くのも楽しい
今の季節なら
雨に濡れた緑が歌いだし
雨を待ちわびた生き物たちが動きだす

傘を差しても防げないのなら
そんな景色を楽しもうってことかな

こころの中で差した傘を閉じて
やせ我慢には
さようなら
辛さと幸せの違いって
ちょっと足らないだけ
生まれ変わるなんて出来ないのだから

そのちょっと
わたしの思いで満たしてあげる

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