なぜか思い出す風景/チアーヌ
 
速度で、
「通り過ぎる場所」だと自覚していたのです。

わたしは悲しくなりました。
花火の匂い、夏の夜の匂い、まとわりついてくる蚊、暗い高原の風景、空気、風、
何もかもがすごく悲しくなりました。
わたしはこんなところにいたいのに、と。

わたしは、こんなところに、いたいのにな、と。

そのとき、なぜ、そんな風にそんなことを強く感じたのか、
自分でもよくわかりません。
ただ、そのときの風景は、今でも匂いごとはっきり、思い出せるのです。


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