春の墓標/ヴィリウ
春が過ぎやうとしてゐる
貴方を見送つた此の暖かい季節が
墓前に咲く花は 絶ゆる事無く
貴方への変はらぬ思慕を歌ひ続ける
想つてゐます
愛してゐます
仮令幾度季節が廻らうとも
好い匂ひのする此の時の風は 貴方を思ひ出させるから
私はまう此処へは訪れぬ事に致しませう
貴方にも 屹度私と共にある未来を見て欲しかつた
目も眩むやうな光に彩られた貴方の未来を 私も共に此の目に映したかつた
墓前には 溢れる愛と 涙と 枯れる事無く咲き続ける花を。
滲む墓標には 私が其の未来に寄り添ひたいと願つた名前が。
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