リスク、/望月 ゆき
夜が、二足歩行で
足早に通り過ぎていく音を
淡い錯覚にくるまりながら、聴いていた
抱きしめあう行為は どこか
呼吸と似ていて、ときどき
わたしたちは声を漏らす
ともすれば
この部屋に充満しそうになる 孤独に、
上書きするためだけの
遠ざかる、オノマトペ
曖昧に音階をずらしながら消えていく、それに
反芻してしまわないよう
はやいため息を かぶせる
閉じられた耳の、
奥の、ずっと奥で、あのひとの指が
今も 愛撫をつづけている
半音だけずれたまま はじまる、あした
そうして また
慣れない左足から 踏み出しては
おんなじ
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