Soundness/はらだまさる
 
遠く、遠く離れた、音。何故こんな音に安心するんだろう。快楽と嘔吐することの平衡感覚、または欲望するアンテナ。

「それが地上の楽園だ。」と、顔のない世界では老成だが年齢不詳の少年が、爪を噛みながら、ぼくらの耳に届かないくらいの小さな声でこぼすと、世界は白々しく耀き出し、空が跡形もなく黒に燃え尽きる、サウンド。

東寺に木霊する、ピアノ。Michael Nymanの、ピアノ。反復と動的な旋律と、ポエジー。人間の歩幅で奏でる感情。暴走族と、ぼくら。騒音と、ピアノ。恥ずかしさ、悔しさ、遣る瀬無さをも吸いこんだ、黒。黒のタキシード。そして赤い靴下。あたたかい。

ぼくらは、今夜もたった一つと抱き合う。



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