ちょっとそこまで/加藤泰清
 
と確かめる勇気

くずれおちたみたいだった夜空の星が
ぐるぐると閃いている
回転運動で
すこし音がする

でも
なにも殺した覚えはない
ひとつずつ確認していく
距離をつめて問いただした

たったひとりで息をひそめて

そして
こっそりとはいた息にまじって
名まえを呼ぶ声がきこえた


風のように走っていく
静寂をつきやぶること
すべての声に耳をかたむける必要はない
世界は0と1だけでできてはいない
みたすものは私でありたいと願ったことがあった
ひとつかみの青い草
ふみにじった白い花
だれかを起こさないようにひっそりと嘆いた
(いくつかの命を殺した)
すこしだけちぎれてしまったものが
目をこらしてもよく見えない
でも
それはやがて輝きにみたされていくから
今はただ 走れ

帰る場所がようやくできた
その理由に胸がふるえた
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