苛まれる/楠木菊花
う。
思い出したんじゃないし、思い続けてたわけでもない。
それに、忘れなかったわけでもないけれど、忘れてもいた。
虫が知らせるには都合が良すぎるし、
ストーリーを横流しできるほど、うまくもできている。
そんなものに涙して感激できるほど
なにかに依存できる純粋さが、消えてしまったかなあ。
君が、
あの時、無情にも。
結局、いつか余裕ができたときに買おうと思っていた
トイレに置く飾りと、台所で使う油落とし用の洗剤と、
変な調味料を2本買って、店を出て、
でもやはりと思って思い出し、蚊取り線香と、
単3の電池を買った。
更に、帰り道でコカ・コーラを買った。
道すがら、歌を歌った。
心の中で。
戻る 編 削 Point(2)