本屋にて/望月 ゆき
街外れの小さな本屋で
彼女と偶然再会した
本屋でよかった。
きりりとした空間では
おしゃべりにならずに
すむ
彼女が手にしている
水色の背表紙の本が何であるか
なんてことは
気にする余裕はなかった
今日のぼくのシャツは
かつてぼくらが恋人同士だった頃にも
着ていたものじゃないか、と
気づいたら
そればかり気になる
物持ちよくっていやになるよ
ページをめくる音は
嘲笑のようにも聴こえ
この場を切り抜けるすべを
探る
人はいつも変わりたいと願い
人はいつも変わらないでいて欲しいと
願う
好きだった人なんかには とくにだ
程近
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