ミハエルポートレイト階段/カンチェルスキス
 
みる瞬間、あのときラー油を2滴か5滴垂らしてよかったなあって誰もが思える。あのぎざぎざがあるからこそ、階段を転げ落ちてくる女子をちゃんと受け止めたら恋に落ちて繁殖。電力会社は電力を配給し続けるし、下水は流れ、クソを浄水に変えてくれる。そういう法則だか規則だか知らないが、そんなもので世界は保たれ、隅々まで覆いつくされていて、まったくもう、嘘をつく余地なんてまったくないんだ。
 冷蔵庫を開けたら、レモンの形をしたレモン果汁が目に飛び込んできた。だから、おれのマウスは滝のような唾液。銭湯の気取ったライオン。
 おれはまだ階段をのぼったことがない。どんな感触なんだろうといろいろ想像することはある。でも、降りたことはあるんだ。





 

 

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