壁に沿って上昇する蝙蝠/カンチェルスキス
駅ビルの屋上から飛び降りてから
地面に落下するまで
ずっと一人だった
公衆便所の個室から伸びて外まで出てる
トイレットペーパーが
雨に濡れて溶けそうだ
誰かが入って自動ドアが開いたパチスロの店内の
床に
深紅のハンカチが落ちてる
横断歩道を歩くのを邪魔した傘の羅列が
敏感な鼻先を削り
水溜りに全部映っている
足が生えてくるはずだと思った
勘違いかもしれない
この体には傷が一つもない
駅ビルの屋上から飛び降りてから
地面に落下するまで
ずっと一人だった
壁に沿って上昇する蝙蝠
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