夏祭り/悠詩
 
神社の石段はクロマティックで
綻びを縫うたびにリズムが泣く
鈍色の穴から囁く間歇気流は
先回りして落としてきた脳の断片
がえんじない足をすり抜けていく

させよ。

そう念じるも
ただもう引き裂いてしまいたいページを
一枚一枚綴りながら
消失点の彼方に

無声音のHが
この身体から開放弦のように

ヮァァァン

ふたりぶんの優しさを
ふたりぶんの慰めを
歌う最後

「にぎやかしいのう」
右手が告げる
ばらばらになりそうな左手が
手摺りに吸いついている
遠くへ行きたいのに
突く杖は耳障り

神社の境内はネクロマティックで
偽りでない愛がうし
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