だぁくん/小原あき
暗闇にはだぁくんがいる
たぶん夜行性で
明かりのない部屋とか
夜中の長い廊下とかに
体育座りをして
誰かが来るのを
待っている
照明をつけないで
廊下を歩くと
だぁくんは近づいて来て
そっと腕を掴む
幽霊みたいな手つきだけれど
不思議に怖くはない
むしろあったかくて
心地がよい
暗闇を一人で歩くと
少し不安だけれど
だぁくんが腕を掴んでくれると
安心してトイレに行ける
真夜中に寝付けないでいると
だぁくんは近づいて来て
歌を歌いはじめる
夫に気付かれない声で
子守唄じゃない
バラードでもない
聞いたことのない歌を
やさしい声で
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