夕方にはカエルと言って/soft_machine
的になってはいけない
過去を認めたことになる
たばこを火につけ
唯一残された一眼レフを
密かに大切にしていることも
気づかれてはならない
別れの言葉の綴り方を知らぬ世代は
ベランダの日溜りで銀杏と鴉を眺めながら
返済しなければならない負い目などない
と言い放つ
震える盃を干す背中があまりに勝手で
あまりに孤り
肩に手を置かれるなどされた時
どうしてよいのか分らない世代
ある日仕事から帰ってみれば
紙切れが端を折り曲げ机にあった
夕方にはカエルと言って
再び行方不明になった父親が操るぽんこつの軽は
誰も踏み入らぬという白い森を見つけただろうか
果たしてまた誰もいなくなった部屋に生活は続く
いらない書類や軽くなった通帳を仕舞い
薬燗を火に掻けシェークスピアを拡げる
惚けても忘れはしないだろう
笑顔のつくり方だけは
二週間の消費
焼酎五升麦酒廿一缶
大根人参蓮根等大量
刺身少々納豆朝昼晩
そう言えば玄関の鍵は
どうやって開けたのか
今更ながら不思議だ
戻る 編 削 Point(10)