キラメキ/マッドビースト
安に悩み
始りの苦味に口を閉ざして俯いている
まだ定まらない陽気に裏切られることを怖れて
色も強さも分け隔てなく
貪欲に光を吸い込む若芽の奔放さと
まだ開ききらない蕾の頑なさを
老獪さが羨んでいる
剣が盾を撃つたびに
火花を散らすキラメキ
街の空気を削りきった光は
丘の上の黒く切立ったビルディングを照らした
光は砕け
星屑のような粉になって建物をつつんだ
黒水晶の塔はその頂きのほうで
太陽に届いてしまったように燦然としていて
その行方を見届けることはできなかったが
ギラついたクロガネ色のキラメキは
私の躊躇など気にもせず
初夏を呼ぶシグナルを既に発し始めているようだった
戻る 編 削 Point(3)