キラメキ/マッドビースト
 
安に悩み
 始りの苦味に口を閉ざして俯いている
 まだ定まらない陽気に裏切られることを怖れて

 色も強さも分け隔てなく
 貪欲に光を吸い込む若芽の奔放さと
 まだ開ききらない蕾の頑なさを
 老獪さが羨んでいる

 
 剣が盾を撃つたびに
 火花を散らすキラメキ

 街の空気を削りきった光は
 丘の上の黒く切立ったビルディングを照らした
 光は砕け 
 星屑のような粉になって建物をつつんだ
 黒水晶の塔はその頂きのほうで
 太陽に届いてしまったように燦然としていて
 その行方を見届けることはできなかったが
 ギラついたクロガネ色のキラメキは
 私の躊躇など気にもせず
 初夏を呼ぶシグナルを既に発し始めているようだった 

 
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