なくなったその・・・/柴田柴助
 
いつもそうだった
冷えたビールの缶をちびちびしゃぶり
歯のあいだをぬって通るアルコールに
心任せ
自我に負け
全てが油絵の具で書かれた、繊細かつどろどろな
そんな毎日

ぼろぼろなスリッパを目の端に眺めながら
向かっているブラウン管のフラットに
そんな毎日をいつまでも、いつまでも
ただただタッチするばかり

僕は人間じゃない
でも宇宙人でもない
飼っている犬でもないし
庭に巣作るツバメでもない
僕は僕
誰も知らない
きっと人間のようにくさくて
でも冷たくて
そう、お人形みたいに冷たくて。

絵は仕上がらない
もう べとべと すぎて
このアートは失敗
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