ひとりでいてほしい/楠木理沙
 
君はひとりじゃないよ そう言ったあなたは 笑顔でわたしをひとりにしてしまうんだよ

ありがとう 無理やり喉元から 無機質な記号を吐き出した

それじゃあまたね 大きく手を振られ 小さく頷いた

またね なんて 言わないでよ

望むことで 苦しくなることを あなたは知らない



人はみんなひとりぼっちだ そんなの わかってるよ

でも あなたと別れたあと 急速にボリュームが上がった笑い声

電車の揺れと同時に襲われて 堪え切れずに 窓に顔をつけた

叩きつけられた 細かい水滴が 力なく 流れていた 



わたしのことなんか あなたは知らない

わた
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