田舎の初恋/大小島
田舎のバス停は屋根があって、周りには木しかない。
屋根の下には、やっぱり木のベンチあって、
もう虫がぶんぶんしている。
だけど、真夏の蒸し暑い日でも、
空気はひんやりしているから
たとえバスが一時間に1本しか来なくても
過ごしていける。
僕がその人に気がついたのは、もうすでに30分くらいバスを待っていたとき
一心に、持ってきたチェーホフを読みふけっていたから
まったく気がつかなかった。
僕のとなりのベンチにいつ座ったのか?その女の人は。
女の人は黙って道路を見ていた。
あんまり黙っているので、ぼくは気がついた。
ささやかなロシアの希望から、チェーホフの世界から
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