父/円谷一
 
もまだ腕には青タンが
 胸の奥にはトラウマが残っていて
 好きになった男性に対して
 恐怖を抱いていた
 私は一人で悩むのが限界になり
 精神科に通って今までのことを話し
 徐々に障害が消えていった
 大学院まで彼と一緒に行って
 数年の交際を得て 結婚することになった しかし父が刑期を終えて
 私達の元へやって来た時
 私は再び病院に通うようになった
 父は度々やって来ては「すまなかった」を 繰り返し自分が癌で余命がないことを
 告白した
 結婚式は父を呼ばずに挙げた
 その直後に父親は死に
 葬式の喪主は私になった
 何の感情も無い私が何故か涙を流していた
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