探し物/肥前の詩人
 
本たちであったり
気ままに利用される机の中であったり
しかし
どうかすると
物自身の意志が
そこに加わっていたのではあるまいか
と思うことさえあった

探すものと失われた物との隔たりは
日数を追うごとに大きくなる
ついには
日常のこまごました出来事の中で
その物の名前さえ
忘れ去られていく
そんなときだ
思いがけなく身近かなところから
ひょっこりと 姿を表すことがある
それだけのことで
苦渋に満ちていた表情が緩み
ほんの少しだけ
豊かな気分に浸ることが出来る

ほんとうに失くしたとき
はじめて ひとは
失くしたものの 重さを量ろうとする
心の痛みをちょっぴり受けながら
ほんとは
とてつもなく大きなものを
失っているということにさえ
気づいていないというのに……   
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