探し物/肥前の詩人
 
  探し物 
                 こうず まさみ

1冊の名簿が どうしても見当たらない
その名簿をもとに
宛名書きしようとした矢先のことだ
空いた時間に片付けようと
気負いたっただけに
手当たり次第 引っ掻き回すのだが
落ち着かぬまま
時間が流れてゆく

ぼくは こだわり続けた
幾時間も 幾日も
物の概念が 明らかにならない以上
おきらめる わけにはゆかなかった

失くすということは
消えることではない
そこには
失くしたものとそれを匿う物との
関係が成り立っているからだ
たとえば それらは
洋服ダンスの引き出しであったり
書架の本た
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