水晶の天ぷら/
小池房枝
紫水晶のかけらを
油で揚げてみたことがあります
天ぷらが食べたかった
わけではなくて
シトリントパーズって
実は加熱処理したアメジスト
というのを試してみたくて
ホイルを開くと
紫水晶のかけらは
見事に白濁していたのでした
温度が足りなかったのでしょう
もう一度
生まれ直すためには
元、紫水晶である処の石英は
机にしまい込まれてのち行方不明
今頃はきっと何処かで
石は石としての在り方と時間の中で
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