青い鳥が青い訳/桜井小春
。俺は横断歩道を渡り始めた。が、美奈子は傘を持った手をぶらんと垂らし、口を半開きにしてポカンとその場で空を見上げている。
「青だわ」
「うん、青だぞ? 渡らないのか?」
「違う、空よ、空!どうしよう分かっちゃった!」
美奈子は微分積分がやっと解けた、といった顔で、いや、もっとだな、それ以上の達成感に満ちた顔で、雲の隙間から覗いている青空を指差した。俺は美奈子の傍らに戻り、一緒に空を見上げた。
「空って青いでしょ?」
「ああ」
「だから青い鳥が青いの!」
「どういうことだよ?」
美奈子は空を指していた指先を俺の鼻先に持ってくると、目の前まで顔を寄せてにっこりと微笑んだ。間近に迫
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)