空気の距離/吉原 麻
あんまり好きじゃない、甘いクッキーを口に運びながら
どうしようと思い、でも電話をしてみる。
3か月ぶりの声。
電話になると聞き取りづらい、こもった低い声。
「会話が圏外だよね」と笑いながら
でもなんだかつうじる、あったかい気持ち。
違う場所で
違うことを
違う人と
してることが信じられない
そんな近かった距離も
ないことになってる、香りがする。
これくらいがちょうど良いよね、と言い合いながら
ちょっと滲む。
でも、これくらいなんだ。
君の後ろに流れる、星に願いを、を聴いて
ケニードリューのCDをあげたことを思い出した。
良かったな、あのころは。
今度はそう言い合いながら、
出る言葉。
今度会おうよ。
そうだね、会おう。
私が名古屋に行ったら、
君が東京にきたら、
それでそのときたまたま二人が暇だったら
そしたら、会おう。
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