木蓮の咲く丘で/蒸発王
木蓮の花は
宇宙(そら)を見上げる
『木蓮の咲く丘で』
花木好きの彼は
木蓮の花が一番好きで
白く甘い芳香が
中途半端にひらいた花びらから立ち上るのを
まるで香りが目に見えるように
眺めていた
そんな彼は
病の入院中
高熱に浮かされながら
こんなことを言った
木蓮の花が完全に開ききらないのは
あれは宇宙を受信しているからだ
夜空の星を見上げ
星の出す低周波から
白銀のプラチナを採取している
でも
最近は
あまり星が見えないから
プラチナがなかなかとれなくて
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)