木蓮の咲く丘で/蒸発王
 
木蓮の花は
宇宙(そら)を見上げる



『木蓮の咲く丘で』



花木好きの彼は
木蓮の花が一番好きで
白く甘い芳香が
中途半端にひらいた花びらから立ち上るのを
まるで香りが目に見えるように
眺めていた

そんな彼は

病の入院中

高熱に浮かされながら

こんなことを言った


  木蓮の花が完全に開ききらないのは
  あれは宇宙を受信しているからだ
  夜空の星を見上げ
  星の出す低周波から
  白銀のプラチナを採取している


  でも
  最近は
  あまり星が見えないから
  プラチナがなかなかとれなくて

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