あやつりママ/なかがわひろか
で煮込まれていたので
多少いびつな形になったが
久しぶりの友人なのだから
その辺は気づかないだろうと
そのままにしておいた
私は母に縫い付けられた糸を適当に動かしながら
母の友人の話に適当に相槌を打った
友人は随分長い間一人でしゃべった後
勝手に帰っていった
母をずっと操作していた私は
汗びっしょりになって
もうすっかりお腹がペコペコになっていた
祖母にすぐにご飯にするよと言って
また母の知人が来たら困るので
母の縫いつけた体はそのままにしておいた
とろとろに煮込まれた母の半分の顔は
とてもおいしそうな匂いがしていて
私たちの食欲を誘った
私と祖母はいつになく
ガツガツと母の半分の顔を平らげた
祖母が食後においしいお茶を煎れてくれて
二人でゆっくりと飲みながら
また作ってねと言われたので
分かったと私は答えた
(「あやつりママ」)
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