世界/海月
 
最後の夜が直ぐ傍まで来ていた
闇に二つの姿が飲まれていく

彼女の瞳は硝子玉のようで
薄汚れた世界でも綺麗に映す
少しの衝撃で砕けてしまいそう
そうしたら、醜い世界を見せなくてすむのに

誰かの為に偽善を尽くす
それは全て自分の為にやっているのに
感謝の言葉は自分を苦しめた

最後の夕焼けの眩しさが目に沁みた
光が地の果てに沈む

彼の瞳からは涙が零れた
残酷な日々を送るだけの生活
安堵の地を夢見る子供達

海の氷が全て解けてしまう前に
僕の愚かな手で全てを終わりに

彼女と彼にほんの少しだけ安らぎの時を
醜い世界に希望の光が差し込む

廃校の教室の誰かの机に
花が枯れてしまった花瓶が一つ
希望の光が乱反射して
全ての机に伸びている

誰かの為にこの身を捧げてもいい
そんな風に思えた

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