噛ませ犬/楠木理沙
 
大歓声のその後に 俺の名前が呼ばれてる どこかおかしな発音だ 
片手を上げたこの俺を まばらな拍手が包み込む

ゴング響いたその後に 左のジャブを軽くつく 左のジャブを軽くつく
意に介さない日本人 薄ら笑いを浮かべてる

右のボディが打ち込まれ 俺は九の字に丸まった 全然効いちゃいないけど
知らない言葉が飛び交って 不意に孤独が押し寄せた

ロープにわざと追い込まれ パンチをもらい続けると さすがに堪えてきやがった
ただひたすらに耐え抜いて 頃合いってのを見てるんだ

やがて俺は倒れこみ 10カウントを聞いていた 遠い異国のカウントだ
ひたすら揺れてる脳みそは むなしさだ
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