蜜色の夢/朽木 裕
泣きじゃくって深く深く眠るように沈む夢の淵。白い光あふれるのはいつもの台所。規則的に響く包丁のリズム。静かに終わる洗い物の水音。印画紙に写しきれなかった想いが酷く幽かな音で泣いているみたい。写真を最期に撮ったよね。明るすぎる台所からの光。眩しくて。眩しすぎて私は君の顔をよく見ることが出来なかったんだ。君泣いていたの?それともあの時、君は笑ったのかなぁ?
「はやく致死量までアイシテクレ、」
君は云い乱暴すぎるくちづけ。病的に長い黒髪からは濃密な煙草の匂い。口腔内に残るストレートのジンが私の舌を侵食する。
「火傷するのはもう沢山なの。
不眠症者の戯言もそろそろお終
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)