波打ち際/shu
波打ち際にふたり立っていた
足元の砂を波が洗う
掬われるような流れに
チリチリと歯がゆい思いで
―カモメのように
飛べたらええな
とおまえは言う けれど
鳥はいつでも地面を見つめながら
飛んでいるんやで
と言いかけてやめた
何も聞こえなくて
カモメたちも黙って
白く砕ける波が空に消えて
降るか降らぬか決めかけているような
雨雲がひろがって
おまえの瞳は
ゆらゆらした不安がいっぱいで
固く結んだ唇は今にもなにか言いたそうで
いま 踏んでいるのは
おれたちの痛み
耐えられない痛み?
寄せては返す時間のな
[次のページ]
戻る 編 削 Point(11)