砂の彫像/なかがわひろか
た
私はいい加減疲れてきたので
そろそろ帰りましょうと言った
少女はいやいやをするように首を振る
私は少し怒ったようにもう一度だけ言ったけれど
少女は聞く耳を持たなかった
朝になって
私は山を作った場所を訪れた
少女は一晩吹き荒れた砂嵐に体を取り巻かれ
砂の中で固まってしまっていた
私は彼女の体だけを取り出した
後には彼女の体を象った砂の彫像が残った
私は山の上にずかずかと昇り
一度思い切りジャンプをした
山はあっさりと崩れ落ちた
少女の彫像も
バラバラと崩れ落ちた
(「砂の彫像」)
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