冷たい床/むくげ
 
薄明かるい、白んだ灰色のフロアで、その右手前にひとつの白い影がある。
まるで皿の上にくしゃりと放り出されたナプキンのように、その少女は打ち捨てられていた。
ひしゃげたように張り付きうつ伏せて、彼女は地下の水流に耳を澄ますかのごとく冷たい床に寄り添っている。
ずるずると長い衣は優雅というよりも半ば無造作に広がって、芸術的な皺で陰影を作りつつ彼女の身体の華奢さを強調していた。
わずかに捲れた裾から覗く足首は、蝋よりも無機質な病的に白い色をしている。整った爪先は贋物のような明度を湛えていた。
ふと目を凝らしてみる。
じわりと迫り来る夜闇のように、彼女の左足を侵蝕するものがあった。それは鬱血した痣のような影だった。
彼女を冷たい床に縛り付けるその黒さの正体は、絶望という名の足枷だった。
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