グリムよ。/望月 ゆき
 
お菓子の家は
どこにあるの。


雲ひとつ見つからない
青く平べったい空が広がった
あの日

雲だけでなく
あの人までも
見つからなくなった

心からあの人を
信じてきっていた
ので
道しるべさえも残さずに
ここまで来てしまった

パンくずくらい
もっていたら よかった


お菓子の家に
たどりつかない。


グレーテルなら良かった。
置き去りにされても 
ヘンゼルが隣で微笑み
手をひいてくれた

あの人は わたしに
魔女さえも与えないまま
わたしから見つからない
場所へ 消えた


お菓子の家は
なかった。


壁のチョコレートを
剥ぎ取って
あの人に持ち帰ったなら
ほめてくれたかも
しれないのに


グリムよ。


物語は誰の手に


物語は
誰のために



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